1 接待の定義
接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」をいう。
この意味は、営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して3の各号に掲げるような興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。言い換えれば、特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。
【解説】
お酒を呑むだけの目的ではなく、楽しく感じるような会話やサービスを期待して来店する客に対し、お酒を提供する行為以上のサービスをすることが接待に当たります。例えば、スナックで、ホステスが特定の客の隣に座り、水割りを作り、たばこに火を点け、長い時間楽しい会話をする、デュエットをする、これが接待に当たります。明らかに居酒屋とは営業形態が違うことがわかります。
2 接待の主体
通常の場合、接待を行うのは、営業者やその雇用している者が多いが、それに限らず、料理店で芸者が接待する場合、旅館・ホテル等でバンケットクラブのホステスが接待する場合、営業者との明示又は黙示の契約・了解のもとに客を装った者が接待する場合等を含み、女給、仲居、接待婦等その名称のいかんを問うものではない。また、接待は、通常異性によることが多いが、それに限られるものではない。
【解説】
接待を行うのは、そのお店の営業者や雇用関係にあるホステスだけとは限りません。
営業者からの依頼を受けた芸者やコンパニオン等が接待することもあります。
店の者ではないからといって接待には当たらないなどと間違った解釈をしないよう注意しなければなりません。
また、一般的には女性が男性を接待するイメージがありますが、男性が男性を接待する、女性が女性を接待することに関しても接待に当たります。
もちろんホストクラブでの接客は、接待に当たります。
3 接待の判断基準
(1)談笑・お酌等
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待に当たる。これに対して、お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たらない。
【解説】
ホステスが、特定の客の隣に座り、ある程度長い間、楽しませるような会話をし、お酌をしたり水割りを作ったりする行為は接待に当たります。一方、お酌をしたり水割りを作ったりしても、すぐにその場を立ち去れば、接待には当たらないということになります。
その際の会話も、「いらっしゃいませ」「ご注文はいかがなさいますか?」「お久しぶりです」「いいお天気ですね」等々の会話は、接待には当たらないということになります。
しかしながら、この基準でいう「継続して」とは一体どのくらいの時間なのか、「社交儀礼上の挨拶」「世間話をしたりする程度」とはどんな会話なのか、どんな会話をするとNGなのか曖昧な点があります。 また、客の隣に座らず、カウンター越しの場合でも、継続して談笑をする行為も接待に当たります。
(2)踊り等
特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、歌舞音曲、ダンス、ショウ等を見せ、又は聞かせる行為は接待に当たる。
これに対して、ホテルのディナーショウのように不特定多数の客に対し、同時に、踊り、ダンス、ショウ等を見せ、又は歌若しくは楽器の演奏を聞かせる行為は、接待には当たらない。
【解説】
特定少数の客に対して、歌、ダンスなどを行えば接待に当たります。ホテルのディナーショウのように、不特定多数の客に対して踊り、ダンスショウ、歌、演奏を行う場合は接待には当たりません。ホテルなどのような規模の大きな場所でなくても、不特定多数の客に対し、生バンドの演奏や歌手を呼んで歌を聞かせる、この接待に当たらない行為は「遊興」に該当します。遊興とは、文字どおり遊び興じさせることです。接待に当たらないので、風俗営業の許可を受けていないお店で行うことができます。ただし、深夜0時以降は行うことができません。
(3)歌唱等
特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを勧奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくはほめはやす行為又は客と一緒に歌う行為は、接待に当たる。これに対して、客の近くに位置せず、不特定の客に対し歌うことを勧奨し、又は不特定の客の歌に対し拍手をし、若しくはほめはやす行為、不特定の客からカラオケの準備の依頼を受ける行為又は歌の伴奏のため楽器を演奏する行為等は、接待には当たらない。
【解説】
隣に座った客に対し、カラオケでの歌を勧め、その歌に対して拍手をし、褒め称える、またデュエットをする行為が接待に当たります。一方、特定の客に対してではなく、店内の客に対してカラオケの依頼を受け、単にカラオケの準備をする行為は接待に当たりません。この接待に当たらない行為は(2)踊り等で解説したとおり「遊興」に該当します。
遊興とは、文字どおり遊び興じさせることです。接待に当たらないので、風俗営業の許可を受けていないお店で行うことができます。ただし、深夜0時以降は行うことができません。
(4)遊戯等
客とともに、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為は、接待に当たる。これに対して、客一人で又は客同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為は、直ちに接待に当たるとはいえない。
【解説】
従業者が、客とともにカードゲームやダーツなどをする行為は接待に当たります。
「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」に当たるからでしょう。
例えば、客1人又は客同士でダーツ等をする行為は接待に当たらないことになりますが、ダーツの種類(デジタル方式)や台数等によっては第8号営業(ゲームセンター等)に該当する可能性があります。
(5)その他
客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為は、接待に当たる。ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のため必要な限度で接触する等の行為は、接待に当たらない。また、客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為も接待に当たる。
これに対して、単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、客の荷物、コート等を預かる行為等は、接待に当たらない。
【解説】
客と身体を密着させる、手を握る、客の口許まで食べ物を運ぶなどの行為は、いうまでもなく接待に当たります。風俗営業の店以外では、通常はしない行為です。逆に考えれば、挨拶のための握手、酔客に対して介抱のための必要最小限の接触は接待には当たりません。 もちろん、普通の飲食店が行うような飲食物の運搬、食器の片付け、客の荷物やコートを預かる行為は接待には当たらないということがわかります。今回の「接待」についての解釈と運用基準を理解することにより、風俗営業の許可を受けなければならない店なのか、それとも午前0時以降も営業を行う深夜における酒類提供飲食店(深酒)の営業をする店なのか、それとも、それ以外の店なのか、営業形態を把握することができます。風適法等関係法令の用語の解釈や運用基準を把握することは、実際に店を営業する上で重要なことです。
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